令和4年度第2回 第59回気象予報士試験 実技1 問1

気象予報士試験の過去問とその模範解答は一般社団法人気象業務支援センターにて過去5年分(10回分)が公開されています(http://www.jmbsc.or.jp/jp/examination/examination-7.html

問題文や図、模範解答などはそちらから入手してください。図や問題文等の引用は気象業務支援センター様にご了承いただき掲載しています。

また、模範解答以外の考察等の内容は全て私見です。気象業務支援センターの見解ではありませんのでご注意ください。

①などはPC上の表記の関係で[1]と記載しています。

(1)[1]30 [2]東南東(南東) [3]海上強風 [4]34 [5]48 [6]海上濃霧 [7]雲頂高度(背) [8]上・中層雲 [9]下層雲 [10]低 [11]寒冷低気圧(寒冷渦、切離低気圧)

[1][2]パッと見では南東ですが、図の西側にあるため緯度線が斜めになっています。どちらかといえば東南東でしょう。模範解答はどちらでも可でした。

[3][4][5][6]海上警報の定義は頻出なので完璧にしておきましょう。今回もこれだけで4点獲得できます。

[8][9]全雲量は7/8ですが、下層の積雲の雲量が1となっています。つまり主体は上・中層雲となります。国際式の天気記号も覚えていない人は再確認しましょう。

下層雲の記号がない時は中層雲の雲量になるんだよね!

[7]赤外画像なので、雲頂高度で決まりです。

[10][11]上空の低気圧[L]は-27.5℃と周辺より低温となっています。こういった低気圧を寒冷低気圧と言います。今回は寒冷渦や切離低気圧も可となっていますが、ここまではっきりと低温で低気圧も解析されているため、寒冷低気圧がベストでしょう。

(2)前線上の波動の周辺では、-64hPa/hの強い上昇流が解析されており、波動の東側で暖気移流、西側で寒気移流となっている。

図1と図3下を重ねたもの

前線上の波動とは矢印で示したところで、キンクと呼ばれることもあります。こういったところは将来低気圧として発達する可能性があり、今回はその特徴を聞いています。発達する低気圧の特徴として、強い上昇流や温度移流があります。また、問題の指示通り鉛直流の極値を解答に含みます。

まず鉛直流の極値は緑色の丸で囲った-64/hPaで、負の場合は上昇流になります。単位は図の下に書いてあります。

また、温度移流は等温線と風記号に注目します。オレンジ色で示した矢羽(暖気移流)と青色で示した矢羽(寒気移流)が黄色の等温線上を横切っています。

これらをまとめて解答文にすると、大体模範解答と近くなります。

(3)[1]上端の気圧:630 hPa 厚さ:20 hPa

前線の転移層は気温も露点温度も上昇するため赤線(上端)と青線(下端)で挟まれた部分となります。上端は630hPa、厚さは下端が650hPaなので20hPaとなります。

上端の高度:3910 m 厚さ:240 m

600hPa=4270m、700hPa=3070mで、100hPa分の厚みは4270m−3070m=1200m。この間の厚みは比例配分ですので12m/1hPaとなります。上端は630hPa=4270m−12m/hPa×30hPa=3910m、厚さは20hPa×12m/hPa=240mとなります。

[2]分母F:130 水平幅:30 km

この問題を解説する前に、前線面はどこのことを指すか知ってるかな?下の図を見て復習しよう。

前線面は転移層の暖気側の境界を指す。つまりエマグラムでは転移層の上端が前線面になるんだ。ここを間違えて寒気側(下端)にしてしまうと解答が変わって不正解になってしまうよ。

地上=高度0mから福岡上空の前線面までの高さは[1]の解答より3910mです。地上の前線までの距離は500km=500,000mですから、3910m/50000m=1/127.9≒1/130になります。

さらに前線帯の水平幅は転移層の厚みと先ほど求めた勾配を利用し、240m×130=31,200m≒30kmとなります。

[3]湿潤層は転移層から上層(上方)にかけて分布している。

丁寧に問題文で湿潤層は湿数3℃以下と記載されていますので、エマグラムからその高度を確認します。

だいたい湿数3℃以下のところを水色で塗ってみました。明確に転移層から上空に向かって分布しています。

ぼくは丁寧に「湿潤層は転移層の下端付近から上層にかけて分布している。」と解答したよ。でもよく考えたら主語は前線面ではなく、転移層だから当然転移層の中も含まれているのか。

[4]東シナ海から前線面を滑昇した空気中の水蒸気が凝結したため。

福岡の雲は(1)[8]より上・中層雲が主体となっています。これは850hPa面の東シナ海の南西風が北上し、前線面にぶつかった後前線面に沿って上昇しますが、その際に冷却され、水蒸気が凝結することで雲が発生します。福岡の転移層は630〜650hPaですから南シナ海の南西風は中層まで上昇していると推測できます。

(1)は標準的な問題でした。(2)も波動という言い回しに一瞬「?」となりますが、キンクのことを聞かれていると理解できれば答えられるでしょう。計算問題は問題自体は難しくありませんが、計算ミスには十分注意しましょう。

問2はこちら↓

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