気象予報士試験の過去問とその模範解答は一般社団法人気象業務支援センターにて過去5年分(10回分)が公開されています(http://www.jmbsc.or.jp/jp/examination/examination-7.html)
問題文や図、模範解答などはそちらから入手してください。図や問題文等の引用は気象業務支援センター様にご了承いただき掲載しています。
また、模範解答以外の考察等の内容は全て私見です。気象業務支援センターの見解ではありませんのでご注意ください。
①などはPC上の表記の関係で[1]と記載しています。
問2はこちら
問3(1)[1] 1000hPa 相当温位:285 K 、湿数:4(5) ℃
750hPa 相当温位:283 K 、湿数:1(2) ℃
いずれも図11から読み取るだけです。相当温位は1K刻み、湿数は3℃刻みの等線となっていることに注意し、湿数はちょうど湿数の実線上になっていないので、前後から按分して回答します。
[2]対流不安定 [1]より相当温位は1000hPaで285K、750hPaで283Kとなり、上空に向かって相当温位が低下しています。頻出なので分からなかった場合は必ず対流不安定の定義を再確認しましょう。 [3]850hPa付近で上昇流が最大となり、700hPa付近で弱い下降流となる。上昇流を赤、その極大付近を濃い赤、下降流を青に塗ってみました。確かに模範解答の通りとなりますが、700hPa付近のこの微妙なところを言及しなければいけないんですね。出題の意図として上昇流の強いところと下降流の間で大気が発散していることが重要なんでしょうか。
ちなみにぼくは「概ね500hPaまで上昇流で、850hPa付近で上昇流が最大となる。」と解答したよ。
実際に問題を解いてみると、出題者の意図を正確に汲み取らないといかようにも解答ができてしまうのが難しいところだね。
たしかに別に間違ったことは言ってないもんね。部分点はもらえるといいけど・・・。
まず、鉛直断面図の南北を見誤らないように注意しましょう。左が高緯度側となっており、北です。38.4°の左右の800hPaと975hPaの風記号をそれぞれ比べてみると、北側(赤い風記号)のでより風向の変化が鮮明となっています。したがって解答すべきは左の北側です。
後は通常の温度移流の解答の定型分に当てはめて解答するだけです。上空に向かって反時計回りですので、寒気移流となります。
(2)[1] 660(640) hPa
[2]-19(-18、-20) ℃少し応用されたエマグラムの問題ですが、しっかりと得点したい問題です。
地上の空気塊の温度を7℃に加熱とあるため、1000hPa付近の気温(実線)を7℃の地点まで右側にずらします。
一方で、混合比は変わらない=露点温度は変わらない、ため地上の露点温度は1℃です。
ここまでわかればあとは通常のエマグラムの問題です。露点温度から等飽和混合比線にしたがって上空に線をひき(青線)、問題文の地上の気温(7℃)から乾燥断熱線にしたがって上空に線をひき(赤線)、交点からさらに上空に今度は湿潤断熱線に沿って線をひき(緑線)、実線との交点が空気塊が上昇して浮力のなくなる高度になります。
ちなみに周囲の大気は加熱されていないので、実線全体を左にずらす必要はありませんよ。
690hPa以上の大気は露点温度が低く、非常に乾燥しています。したがって、空気塊を上昇させると、乾燥断熱線に沿って温度が低下しますが、周囲の気温は実戦の通りその低下率より小さく、周囲の気温のほうが高くなります。
と言うことは空気塊は周囲より低温で、重たくなるためそれ以上上昇しません。つまり「安定」となります。
(3)[1]領域A:山bより標高の高い山aの西側で降水量が多く、山aより東側は降水がない。
領域B:山cのすぐ西側から山頂付近にかけて降水量が多いが、山cよりも高い山dにかけても弱い降水がある。
領域Aについて、図14の解析雨量では、東経137.5°付近まで降水が見られますが、それより東には雨は見られません。これは空気塊が東に進んだ時、最初に標高の高い山aで降水が発生し、その東にある標高の低い山bではすでに山aで水蒸気が凝結、降水となっているため、山頂まで空気塊が上昇しても露点温度に達しないためと考えられます。
一方、領域Bはより東にある山dの方が山cより標高が高いため、山dの斜面を上昇し山cの山頂より空気塊の高度が高くなった際に、再度降水が発生したと考えられます。
[2]山a:ほぼ中立 山b:安定 山c:対流不安定 山d:ほぼ中立山頂から100hPa分の高度(赤い矢印の範囲)の相当温位の変化を確認し解答します。
山aは285Kの等相当温位線を跨いでおり微妙に安定とも取れますがほぼ中立とやや幅を持たせているので、ほぼ中立の方が適切でしょう。
山bは明確に上方ほど相当温位が高くなっていますので安定。
山cは700hPaと800hPa付近の太線の間に細線がないのでいずれも285Kとわかります。するとその間の285K付近に相当温位の極小があり、山cの山頂付近は286Kと読み取れます。上方ほど低いので対流不安定。
山dは間に等相当温位線がありませんからほぼ中立。
鉛直断面図は数値が増えてるか減ってるか読み取るのが難しいわ。
等線の読み取りは一番気になるあたりに数値が書いてないことも多いので慣れるまで難しいかもしれないね。たくさんの問題を解いて色々な図を読み取る練習をしよう。
(4)波浪、暴風雪(風雪)、雷、着雪(または着氷)、低温、なだれ、高潮 のうちから3つ
これまでの問題から総合的に判断しながら、発表されるおそれのある警報・注意報を考えます。
等圧線は混み合っており、風が強いと予想されます。北日本の日本海側では向岸流となっており、波浪は書けそうです。さらに低気圧が急速に発達することで地上気圧は低下し、吸い上げ効果により潮位は上昇します。したがって高潮も書けます。
また、降水量が多い予想で1月ですので北日本は大雪と思われます。大雪、暴風以外とありますが、暴風雪はOKみたいです。
問3(1)[2]より対流不安定となっており、ひとたび対流が始まれば大きな上昇流が発生し、積乱雲による激しい気象現象が予想されています。したがって雷も書けるでしょう。
図9より本州の東側では南から暖気が北上しており、太平洋側では気温が上がってくる可能性があります。するとなだれや着雪もいけそうです。その一方で日本海側は北からの寒気が入ってきており、低温注意報の可能性があります。
個人的には波浪、高潮、雷が比較的自信を持って解答できる選択でした。
問3は基礎的な内容を少しひねって出題されており、鉛直断面図や大気の安定についてしっかりと理解できていないと難しい問題でした。ただ、逆にここはしっかりと理解できていればある程度得点も可能なので、差がついた問題とも言えるかもしれません。
総評
実技2はかなり難易度が高かったように感じます。確信を持って解答できる問題が少なく、時間を使って考えても解けないような問題もあり、通常であれば得点源である問3も一筋縄で解ける問題は少なかったと思います。ボーダーが65%といつもより少しだけ低かったようですが、それでも合格者は取れるところでしっかりと得点していると考えることができます。
第59回以前は受験していないから、本番の感覚はわからないけど、この回だったら全く合格できる自信がないや・・・。